フェイクシアリング(エコファー)バッグのお手入れ方法|毛並み・汚れ・保管
フェイクシアリングは「パイル地」です。短い繊維を台布に織り込んで立たせた構造で、あのふわっとした手触りはこの立った毛(パイル)から来ています。そして同じ構造のせいで、毛は必ず寝ます。バッグを置く、腕に挟む、手を置く——そのたびに繊維は倒れ、倒れたままになります。
ただ、ここで知っておきたいのは「毛が寝た」のと「傷んだ」のは別だということです。寝ただけなら繊維は全部残っていて、向きが悪いだけ。傷んだとは、繊維が溶ける・切れる・台布から抜けることです。お手入れの目的は、寝ている間に直すこと。傷んでからでは遅いのです。
フェイクシアリングはなぜ毛が寝てしまうのか
フェイクシアリングの繊維はポリエステルかアクリルで、ウールではありません。ウールには元に戻ろうとする縮れ(クリンプ)がありますが、合成繊維にはそれがありません。一度倒れると、倒れたまま。
さらに摩擦と圧力が追い打ちをかけます。毎日同じ場所を腕で挟むなら、そこだけ他より早く寝ます。だから「気づいたら一部分だけテカっている」という状態が起きるわけです。
週1回・2分のブラッシング:道具とやり方
お手入れでいちばん効果が高いのがブラッシングです。時間は2分ほど。用意するのは「適度にコシのあるやわらかいブラシ」——ベビーブラシ、スエード用ブラシ、目の細かいコームなどが使えます。避けたいのは硬いナイロンのたわしで、毛を起こすより先に抜いてしまいます。
- 一方向にだけとかします。往復させると毛が絡まるので逆効果です。
- 力はほとんど入れず、短いストロークで。毛先だけが当たる感覚で十分です。
- 手のひら大の範囲ごとに区切って、どこをやったか分かるように進めます。
- 最後に乾いた清潔な手で軽く全体をなでて、毛並みを整えます。
週に1回で十分です。毎日使うなら、週末に軽く1回+月に1回ていねいに、くらいが現実的なペースです。
汚れたとき:台布を濡らさない部分洗い
毛の奥にある台布は、パネルの形を保っている部分です。そして水に弱い。濡れると硬くなったり、乾きムラでパネルが波打ったりします。なので部分洗いの原則は「毛は洗う、台布は濡らさない」です。
- ぬるま湯に中性洗剤を1滴落として薄めます。泡立てる必要はありません、ぬるっとすれば十分。
- 白い布を浸して、滴らないところまで絞り、汚れを「叩く」。こすってはいけません。こすると汚れを台布へ押し込み、同時に毛を寝かせます。
- 今度は水だけを含ませた布で叩いて、洗剤を抜きます。
- 乾いたタオルで押さえて水気を取り、口を開けたまま室温で乾かします。ラジエーターや直射日光のそばはNG。
- 完全に乾いてからブラッシング。洗った場所は必ず毛が寝ているので、起こして終わりです。
ファンデーションや皮脂など「油」のシミなら、水を触れさせる前に別の処理が必要です。重曹をペースト状にして数時間置き、油を吸い出してから洗うほうがきれいに落ちます。
毛並みがつぶれてテカってしまったときの戻し方
すでにテカっている場所は、湿気と弱い熱で繊維をいったん柔らかくしてからブラシで起こします。ポイントは「どちらも弱く」です。
- 衣類スチーマーを20〜30cm離し、パネルの上を数秒ずつ往復させます。一箇所に当て続けない、濡らさない。
- 繊維が温かいうちに、すぐ一方向へブラッシングします。
- 完全に乾いてから中身を入れます。
絶対にやってはいけないのが、高温のアイロンを当てることです。合成繊維は綿よりずっと低い温度で溶け、一度硬化すると二度と戻りません。直そうとして取り返しのつかない状態になります。目安は「熱源に手を5秒当てていられない温度は、パイルにも熱すぎる」です。
保管で毛をつぶさないために
使わない期間のダメージは、たいてい使っているときではなくクローゼットの中で起きます。守るべきは「形を保つ」「呼吸させる」の2つだけです。
- 中性紙(酸フリーティッシュ)を軽く詰めて形を保ちます。詰めすぎは禁止——圧力こそ毛をつぶす原因です。
- 保管袋は不織布など通気するものを。密封ビニールは湿気がこもってカビの原因になります。
- 吊るさず棚に置きます。吊るすとバッグの全重量がストラップの付け根一点にかかります。
- 直射日光を避けます。合成パイルの染料は、思っているより早く退色します。
25cmクラスのバッグなら、吊るす収納より棚の箱のほうがそもそも扱いやすいサイズです。参考までに、Jelkin 25 Cloud は外寸 25×17×14cm・自重600g。30×22×18cm前後の箱なら、余裕はあるのに中で崩れません。
よくある質問
洗濯機で洗えますか?
できません。撹拌で繊維が台布から抜け、脱水で寝た状態のまま固まります。手洗いで、それも汚れた部分だけにしてください。
どんなブラシを使えばいい?
やわらかい天然毛のブラシ、ベビーブラシ、スエードブラシなど。見分け方は簡単で、手の甲に当てて「ちくちくする」なら硬すぎます。
毛玉ができたら?
生地用のコームやセーターストーンで浮いた毛玉を取ります。指で引っ張るのはNGで、つながっている繊維まで抜けます。取ったあとブラッシングしてください。
雨に濡れたときは?
タオルで表面を押さえ、乾いた紙を軽く詰めて形を保ち、室温で乾かします。ラジエーター・ドライヤーは使わない。完全に乾いてからブラッシングです。
日焼け止めや香水がついたらもうダメ?
たいてい大丈夫です。どちらも油分なので、油ジミとして扱います。まず粉で吸い取り、薄めた洗剤で叩き、最後にブラシ。見えているシミより、手触りの範囲のほうが広いのが普通です。